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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2823号 判決

控訴人

神奈川県信用保証協会

右代表者

福田四郎

右訴訟代理人

村田武

楠田進

被控訴人

横浜市

右代表者

飛鳥田一雄

右訴訟代理人

上村恵史

被控訴人

高野きりゑ

被控訴人

姜鳳球

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人代理人は、「原判決を取り消す。横浜地方裁判所昭和四二年(ケ)第一三八号不動産任意競売事件につき同裁判所が作成した原判決添付第一配当表中配当順位2ないし4(但し2は2の1、2)の部分及び第三取得者に対する剰余金交付の部分を取り消し、原判決添付第二配当表のように配当を実施する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」旨の判決を求め、被控人市代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠の提出、援用及び認否は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決四枚目―記録二一丁―表九行目「代位弁済した。」から一〇行目末尾までを次のように改める。「代位弁済し(なおその内金一〇万円はその後樋口から弁済を受けた)、同月二九日右代位弁済を原因として前記根抵当権移転の附記登記を経由した。右登記は、本件土地につき被告横浜市のために昭和四二年八月四日なされた租税滞納処分による差押登記、被告高野のために同年一〇月三〇日なされた同月二四日の売買を原因とする所有権移転登記、昭和四三年三月七日被告高野の持分五分の二、同姜が持分五分の三の共有とする更正登記に先き立つものである。」)。

理由

当裁判所は、控訴人(原告)の被控訴人(被告)らに対する本訴請求を失当であるとするものであつて、その事実認定及びこれに伴う判断は、次のとおり、附加し、改めるほか、原判決がその理由中に説示するところと同一であるから、その記載(原判決八枚目―記録二五丁裏―一行目から、原判決一三枚目―記録三〇丁―裏一行目「棄却する」まで)を引用する。

1  原判決一〇枚目―記録二七丁―表六・七行目に「根抵当権登記移転の附記登記」とあるのを「根抵当権移転の附記登記」と改める。

2  原判決一二枚目―記録二九丁―裏三行目「原告は」から原判決一三枚目―記録三〇丁―表一〇行目までを次のように改める。

「原告は、右損害金の約定によつて民法四四二条二項による法定利率の規定のみではなく同法五〇一条但書五号の規定も排除され、根抵当権の被担保債権に附従する損害金債権が、右被担保債権についてなされた損害金の特約の根抵当権設定登記に登載されている場合、代位弁済による抵当権移転登記を経由するときは、前記求償債権に関する特約の範囲内で根抵当権目的不動産の後順位差押債権者または後順位第三取得者に対抗することができると主張する。民法四五九条二項、四四二条二項の各規定が任意規定であつて、連帯保証人間において、右各条に反する損害金の特約が締結された場合、右特約が当事者間において有効であることはいうまでもない。しかし、保証人と抵当不動産の差押債権者または右不動産の第三取得者との間においては同様に解することができない。すなわち、保証人は、弁済をなすにつき正当の利益を有する者であるから、弁済によつて民法五〇〇条により当然債権者に代位するとはいえ、右代位弁済の後に抵当不動産の第三取得者となつた者に対しては、自己と他の保証人との間で遅延賠償につき高率の損害金が特約されている場合にも、特約上の権利を代位し得る範囲は、同法五〇一条本文によつて、同法四五九条二項、四四二条二項による求償権の範囲を超えてはならず、代位弁済後抵当不動産を差し押えた債権者に対し右特約上の権利を対抗し得る範囲は、同法五〇一条本文によつて決定の遅延利息に限られるほか、同法三七四条の制限に服すると解すべきであり、根抵当権設定登記に根抵当債権者と根抵当債務者との間の弁済期後の損害金に関する特約が記載され、代位弁済による抵当権移転登記が経由されたときにも同様に解するのが相当である。

してみれば、前叙事実関係のもとにおいて、原告の出捐額の半分およびこれに対する代位弁済の日の翌日である昭和四〇年三月二七日から二年間商法所定年六分の割合による損害金を求償権の範囲として原告に配当した別紙第一配当表には原告の主張するような違法を認めることができない。

3  原判決一三枚目―記録三〇丁―表末行に「被告」とある後に「ら」を加える。

よつて、被控訴人らに対する控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は、理由がないから、民訴法三八四条によつてこれを棄却すべく、控訴費用の負担につき同法八九条、九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(西川美数 園部秀信 森綱郎)

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